015風に吹かれて

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縁側にごろりと寝転んで、顔のすぐ前までやってきた猫又のねーさんを撫でてやる。ねーさんは気持ちよさそうに喉をごろごろと鳴らして、甘えるように撫でている手にすり寄った。

そよそよと優しい風が全身を包む。水の中を漂っているような心地よさに眠くなってきて、ねーさんを撫でていた手を顔の傍に降ろした。ねーさんが不満そうに首元に頭突きをしてくる。地味に苦しいからやめてほしい。

重くなる瞼に逆らえそうになく、素直に眠ってしまおうと思って目を瞑る。その時、ふと背後に何者かの気配を感じた。

「眠るのか。眠るのかいのう。折角遊ぼうと思うていたのに。遊べや遊べ。わしはつまらん。おい、おい」

幼い子どもの声。声だけでは男の子か女の子かわからない。

玲香は重い瞼を懸命に持ち上げて、緩慢な動きで身体を起こした。振り向いて、不満そうに頬を膨らませている座敷童を見る。

「眠いんだけど」
「遊べや玲香」

聞いちゃいない。

古くからこの屋敷に住み着いているざんぎり頭の座敷童。五、六歳くらいの容貌で、柘榴色の着物を黄色い帯で締めている。着物の色から少女なのかと思いきや、以前玲香が尋ねたとき、座敷童は「性別なんぞ考えるだけ無駄じゃ!」と元気に答えた。喋り方も幼い子どもらしくはないし、ちぐはぐな存在だと玲香は密かに思っている。

「今日はここで眠るのが気持ち良いと思うよ」

言いながら、身体にすり寄ってきたねーさんの頭を撫でてやる。今日は風がとても柔らかくて日差しもぽかぽかと暖かい。縁側での昼寝はきっと気持ちが良いだろう。

「座敷童も一緒に寝れば良い」
「わしは玲香と遊ぶんじゃ!」
「僕は寝ます」

素直に言うことを聞けないのであれば致し方なし。

玲香は座敷童の小さな身体を抱え込んで、再度縁側に寝転んで目を閉じた。傍に居たねーさんもすかさず玲香の頭の傍にととと、と寄って丸まった。

座敷童が何やら騒いでいる。目を閉じたまま「五月蠅い寝ろ」と素っ気なく言うと、途端にしんと静まった。

右目を薄く開けて腕の中の座敷童の様子を窺う。座敷童は拗ねたような表情をしていたと思うと、次第に顔を綻ばせて嬉しげにぎゅっと抱きついてきた。

可愛い奴だな、と思いながら今度こそ眠るために瞼を下ろす。

柔らかな風が身体を撫でてくれる。腕の中のぬくもりと、顔の傍で眠るねーさんの気配を感じながら、心地良い眠りに身を委ねた。

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