文章

007手を繋いで

右手にぬくもりを感じるのが当たり前になったのは、いつからだったか。それはもう遠い昔からだったような気もするし、ここ最近だったような気もする。玲香に寄り添うその人は、いつも優しく微笑み、そっと手を握って、いつも玲香を導いてくれる。水の中を揺蕩…

006笑顔

ぼんやりと、眺めていることが多かったように思う。幼い頃は「親」というものが何なのかよくわからなかった。母親に棄てられた玲香にとっては、親から与えられる無償の愛などどいうものは、空想のようにぼんやりとしていて存在しないと思っていたし、例え存在…

005綺麗なもの

ふと、光が反射して瞳がきらりと輝いた。玲香の夜の海のような青藍の瞳は、まるで宝石のようでもあって、気を抜くと吸い込まれてしまいそうな気分になる。「綺麗だね」「……?」思ったまま言葉にすると、机を挟んで向かい側に座る玲香が茜を見て不思議そうに…

004白い花

同い年くらいの少女が、玲香の眼前に白くふわふわとした花の束を差し出している。少女は半袖のセーラー服を着ていて、玲香とは違う高校に通っている生徒だということがわかった。どこの高校の制服かはわからないが、ひとまず、知り合いでないことは確かだ。「…

003風の吹く場所

視える、というのは酷く息苦しい。氷織たち妖怪が居る家に帰れば、そこは視えることが当たり前の世界だから、安心して息が出来る。だけれど、その世界から一歩離れてしまうと、自分の当たり前は「異常」に変わって、常に気を張っていなければぐさぐさと刃を突…

002手

あ、と思った時には遅かった。手のひらに出し過ぎてしまったハンドクリーム。絶対に、手全体に広げても、揉み込んでも、絶対にベトベトしてしまう量だ。玲香は溜息を吐いてクリームを塗り広げていく。「あれ。白波って、ハンドクリーム使うんだ」いつの間にか…

001晴れた日に

『アルストロメリア』の玲香と氷織のお話。キャラ設定はこちら------------------------------------------------------------「氷織、折角良い天気なのに、外に出ないの?」山で彷徨っていた所…

アルストロメリア

妖怪(雪女)に拾われて育てられた見た目少年ぽい少女・白波玲香と妖怪や幽霊、そして人間のお友だちと送るちょっと不思議な日常生活。たまにホラーっぽい。キャラクター設定(はじめに読むと多分より楽しめる)<高校一年生>■紫藤茜編(準備中)<高校二年…

キャラ設定

<高校生たち>白波 玲香(しらなみ れいか)♀二年一組。幼い頃に雪女・氷織に拾われて妖怪屋敷で育てられる。幽霊が見えるものの、祓える力はない。ネーミングセンスもない。一人称「僕」の中性的な美しい少女。冷めているように見えるが、…

色々100のお題

お題サイト:追憶の苑様001:晴れた日に002:手003:風の吹く場所004:白い花005:綺麗なもの006:笑顔007:手を繋いで008:歌009:おひるごはん010:海011:同じ空の下012:安らぐ場所013:心音014:手紙015:…

墓場を待つ人

死にたい。その言葉を形作った唇から、声がこぼれることはなかった。息が漏れる音。舌を弾く音。風が運ぶ鈴の音。目が痛い。口が渇く。汗ばんだ体にひっつくTシャツが煩わしい。どうやら私は、目が覚めたようだ。一度ぎゅっと目を瞑り、開ける。緩慢な動作で…

真綿

忘れられないことがある。それは、時が経てば経つほど、真綿のように優しくわたしの首を絞めていく。まだ子どもだった頃に起こった悪夢のような出来事。それから25年経ち、愛する人と、これから生まれてくる愛しい命に恵まれても、真綿の紐は、わたしの首を…