こんにちは。
【小説×歌×朗読】中心に活動している創作プロジェクト「SSQuest」の首領・雪花です。
小説を書くときは、台詞の他に「地の文」が必要です。
「地の文」とは、台詞以外の文章のことです。
例えば、
Bが、ふと思い出したように言った。
「Bが、ふと思い出したように言った。」が「地の文」にあたります。
この「地の文」を書くにあたり、「人称・視点」を決める必要があります。
主な「人称・視点」には、3種類あります。
最初は、この「人称・視点」をどう使い分けするか、どれが自分の小説に適切なのか迷うと思います。
かくいう私も試行錯誤を繰り返しました。
「書きたいものを書くために、どういう書き方が一番合うのか?」
何度も悩みましたね。
今では小説の雰囲気等に合わせて使い分けをしておりますが、最初から出来ていたわけではありません。
今回は、それぞれの「人称・視点」の特徴、メリットやデメリットをご紹介します。
自身の小説に合う書き方を見つけてみてくださいね。
もくじ
「一人称」とは

「一人称」は、「僕は~した」など、登場人物の一人称(「私」「僕」「俺」など)・視点で書くことを言います。
例えば
Bが、ふと思い出したように言った。僕は、いきなり失礼だな、と眉を寄せた。何てことのないように言っているが、突然言われた僕からすると、ちょっと傷つく。
のようになります。
「一人称」のメリット
「一人称」で書くメリットは、その人物の気持ちを表現しやすい・読者に伝わりやすいことです。
上述した例で言えば、「僕」の気持ちを、直接的な表現で「地の文」に書いています。
そのため、読者に「僕」の気持ちが伝わりやすくなります。
「僕」の視点なので、
「ちょっと傷つく」
「何だよ、馬鹿にしやがって」
など、その人物の口調で、思ったことをそのまま書いても違和感はないのです。
読者にとっては、共感しやすくなる人称・視点でしょう。
「一人称」のデメリット
「一人称」のデメリットは、その視点の人物以外の気持ちが伝わりづらいこと、そして、視点の変えづらさにあります。
「一人称」で書く場合、「僕」以外の登場人物の気持ちは、あくまで「僕」視点で見た・感じたことになります。
そのため、読者には「『僕』にはそう映っている」ことしか伝わりません。
本当にそのキャラクターの気持ちが、「僕」が感じたままのものかは、明確にはわからないのです。
また、「僕」が見たもの・聞いたことしか書けないため、「僕」の死角で起きていることは伝えられません。
「僕」がいないところで他の登場人物が何かをしていても、「僕」がそれを見なければ描けないのです。
しかし、途中で「僕」から「私」に視点を切り替えると、読者の混乱を招きます。
では、試しに「僕」と「私」の視点を混ぜて書いてみましょう。
「Aって、馬鹿よね」
私は、ふと思いついてAに言った。僕は、いきなり失礼だな、と眉を寄せた。何てことのないように言っているが、突然言われた僕からすると、ちょっと傷つく。
上の文章は、「私」の視点で始まっていますが、次の文から「僕」の視点に変わっています。
このように、視点がころころと変わってしまうと
「ん?今誰の視点だ?」
と読者が疑問を抱くことになります。
登場人物が二人だけであれば、そして、上記の文のように「男女」という明確な違いがあれば、まだ良いでしょう。
しかし、3人以上になった場合、このデメリットが顕著に表れるでしょう。
「三人称単一視点」とは

「三人称」には、複数のパターンがあります。
ひとつは、「三人称単一視点」です。
「Aって、馬鹿よね」
Bが、ふと思い出したように言った。Aは、いきなり失礼だな、と眉を寄せた。Bは何てことのないように言っているが、突然言われた身からすると、少々傷つくものだ。
このように、「三人称単一視点」では、「A」というひとりの登場人物に焦点を当てて、「A」の心情を描くことができます。
「三人称単一視点」のメリット
「三人称単一視点」は「一人称」と似ていますね。
「一人称」との違いは、登場人物の表現が「僕」から「A」になった点です。
この違いにより、「三人称単一視点」には「一人称」にないメリットがあります。
それは、【視点の幅が広くなる】ことです。
「一人称」では、「僕」が見たもの・聞いたこと等のみ書きます。
対して「三人称単一視点」では、「僕」が見たもの・聞いたこと以外にも、俯瞰的な描写を入れることが可能です。
例の文章に、次の一文を入れてみます。
「Bのその言葉が、Aの気を引きたいがためのものだとは、Aはまだ気がつかない。」
「Aって、馬鹿よね」
Bが、ふと思い出したように言った。Aは、いきなり失礼だな、と眉を寄せた。Bは何てことのないように言っているが、突然言われた身からすると、少々傷つくものだ。
Bのその言葉が、Aの気を引きたいがためのものだとは、Aはまだ気がつかない。
いかがでしょうか。
あまり違和感なく、「A」以外の視点の文を入れることができています。
このように、「三人称単一視点」は、登場人物ひとりに焦点をあてたものですが、「一人称」よりも幅広い視点で描写することができます。
また、章ごとに区切って、一章は「A」の視点、二章は「B」の視点……のように変えても問題ありません。
「Aは~」「Bは~」と、誰の視点かが明快だからです。
「三人称単一視点」のデメリットは、今のところ特になさそうです。
「一人称」と「三人称」の良いとこ取りをしているので、読者にも伝わりやすく、筆者としても書きやすい人称・視点でしょう。
実際、現在の小説は「三人称単一視点」をとるものが多くなっています。
人称・視点に迷うようであれば、「三人称単一視点」を採用してみてはいかがでしょうか。
「三人称多視点」とは

「三人称」のもう一つのパターンは、「三人称多視点」です。「神視点」とも呼ばれます。
「Aって、馬鹿よね」
Bが、ふと思い出したように言った。Aは、いきなり失礼だな、と眉を寄せた。彼女は何てことのないように言っているが、と突然言われた身からすると、少々傷つく。Bはそんな彼の様子を見て、ふふっと笑みをこぼした。この男の反応は、やはり飽きないものだ。
このように、「Bが」「Aは」など、主語が多くなりますが、「誰に焦点を当てて書くのか、特に制約なく」自由に書くことができます。
「三人称多視点」のメリット
「三人称多視点」のメリットは、上述したように、「自由に書けること」です。
どこで誰の描写をしてもいいですし、特定の人物に焦点を当ててどんどん深掘りしていくのも自由です。
また、小説によっては途中で筆者自身が登場するなど、実に奔放な表現もしています。
自由な分難しいかもしれませんが、書き方によっては、かなり面白いものになると思います。
私も「三人称多視点」を上手に書けるようになりたいと思っています。
「三人称多視点」のデメリット
「三人称多視点」のデメリットは、
・主語が多くなりがち
・「視点がブレている」と思われる可能性がある
ということです。
現在の小説は「三人称単一視点」が主流となっています。
それ故に、視点が統一されている「三人称単一視点」と比べ、「視点がブレている」と思われる可能性が高くなります。
また、視点が自由な分、その時の視点が誰のものか明確にするために、「主語」が多くなりがちです。そのため、「なんだかごちゃごちゃしている文章だ」と思う人も少なくないでしょう。
まとめ

いかがでしたか?
小説の「台詞」以外の文章……すなわち「地の文」の書き方は、大きく3種類あります。
それは、
・一人称
・三人称単一視点
・三人称多視点
です。
それぞれの書き方にメリット・デメリットがあります。
それらを理解し、書きたい小説の雰囲気やジャンル等に合わせて使い分けてみるといいでしょう。
それでは、最後までお読み下さりありがとうございました。